Yoshimatsu Laboratory
電気抵抗率測定装置(高温)PPHL-800
室温~750 Kまでの4端子直流電気抵抗が測定可能。
Keithley 2450ソースメータとScientific Instruments Model 9700温度コントローラをLabVIEWで制御し、GUIによる自動抵抗率測定が可能。
Ni金属の相転移(~620 K)による温度校正済
PIDを用いない試料温度制御プログラム
本装置の温度制御は一般に用いられるPID制御ではなく、ヒーター出力を温度の関数としたfixed heater outputを用いている。これにより、Rampでの温度追随遅れによるheaterの過剰出力を抑制し、滑らかな温度制御を実現している。実際に1.2 K/minで750 Kまで温度上昇させた際の温度とヒーター出力の時間経過を示す。試料近傍のCh. Aとヒーター近傍のCh. B熱電対の温度が線形に上昇していることがわかる。ヒーター出力も計算値と若干のオフセットを持ちながらも徐々に上昇している。温度制御の正確性を評価するため、Ch. Aの温度の時間微分を取った。全温度領域で設定値の1.2 K/minでの昇温ができていることがわかる。ここで室温付近で昇温レートが1.5 K/minに達しているのは、ヒーターOn初期の温度追随遅れによるheaterのわずかな過剰出力によるものである。またT > 740 Kで昇温レートが落ちているのは、ヒーター出力の装置上限である80%に達しているためである。
Ni金属を用いた高温領域の温度補正
温度計が示す値と実際の試料温度が同じかどうかは、常に悩ましい問題である。低温領域においては、Quantum DesignのPPMSが信頼された温度制御装置としてその地位を確立している。一方で、室温以上特に400 K以上の高温領域では、試料温度と測定温度が一致しているかの確認は不可欠である。しかしながら、高温領域での試料の温度校正法は確立されていない。
そこで当研究室では、Ni金属の強磁性-常磁性の磁気転移に伴う電気抵抗のキンクを使い装置の温度校正を行っている。文献[ref]では、抵抗率の温度微分は、キュリー温度627 KのNi金属で617 Kにピークを持つと報告されている。そこで、純度2N8のNi金属を真空蒸着により薄膜化し、本装置を用いて抵抗率の温度依存性測定を行うことで抵抗率の温度微分を算出した。
その結果、既報と同等の抵抗率の温度微分が618 Kにピークを持つことが明らかとなり、本装置では室温から~600 Kの範囲では試料温度と熱電対の温度が一致すると考えて良いことを明らかにしている。
[ref] P. P. Craig et al., Phys. Rev. Lett. 19, 1334 (1967).